審査員として感じた新俳句の風――お~いお茶新俳句コンテスト新俳句大賞表彰式に出席して

帝国ホテルで開催された「第34回おーいお茶新俳句コンテスト新俳句大賞」表彰式
(写真はすべてマクマレイ研究室提供)

10月23日に私は、帝国ホテル(東京都千代田区)で開催された「第34回お~いお茶新俳句コンテスト新俳句大賞」表彰式(主催 株式会社伊藤園)に参加し、日本各地から集めてきた俳句研究家たちと意見を交わした。英語俳句の研究を専門としている星野恒彦先生(早稲田大学名誉教授)と、俳人スペシャリストである夏井いつき先生(プレバト出演)、安西篤先生(海程会会長)と共に、英語俳句と日本語俳句の関係性を深掘りすることで、現代俳句の進化論に関する学術的議論を交わした。表彰式の当日に、昔鹿児島国際大学に訪問頂いており、株式会社伊藤園お~いお茶新俳句大賞事務局の末下さんと小林さんが出迎えてくださり、懐かしさを感じる和やかな雰囲気で表彰式を迎えることができた。

第34回新俳句学会表彰式は応募作品数日本一を誇る創作俳句コンテストで、34回目の今年は約192万句の応募があった。今年の春、英語俳句の部応募総数29,991句から一つの作品を選ぶためにすべての俳句を詠んだ。私は、英語俳句大賞受賞者である埼玉県鴻巣市の後藤あんさんは以下の作品で思いを綴った。

cold night
flood light
vending machine
(日本語訳)寒い夜/街灯ひとつ/自販機ひとつ

誰もいない光景を描こうとすると、なかなか難しい。無人のままにしたくても、描写するうちに作者自身もついどこかに現れてしまう。ただ、この作品には面白いエピソードも存在し、当時自販機で暖かい飲み物を買おうとしたが、その時は小銭を持ち合わせていなく結局買えなかった。とお話ししてくださった。私はこの作品の美しさをこう解説する「この作品は実に新しいスタイルで詠まれている。「cold night, flood light」と言った脚韻を利用することで、古典的な俳句形態ではなく新俳句の独特なフォルムである最低限の名詞のみで組み立てられ、簡潔に説明することを可能にした」と語った。また、新俳句の特徴である一つの単語が可視的に2文字に分割する現象は、音節を聞こえやすくすることが現在の研究で目立ち始めた。

会場ではすばらしい句が多くて、われわれが勉強することが多かった。みなさんの句が集まって一つの世界を表しているような気持ちになる。お~いお茶新俳句大賞という『流派』が今回で完成したという声が多く、私の研究に対し興味深い情報が得られた。

今回の訪問で、本学で英語俳句コンテストの開催方法と英語事業の拡大と将来性を学ぶことができた。マクマレイゼミの4年生の原有輝は、12月2日に本学で開催されている「第3回中学生・高校生英語俳句コンテスト」に向けた学生審査会を受け、「鹿児島国際大学ではオーソドックスな英語俳句が作る傾向が目立ってきたが、周辺の中高生の作品を詠み、現代俳句の流れを受け新俳句が用いられた作品がこれからも数多く登場する可能性があることを受け、本学における英語俳句事業及び研究は、これからもより一層深いものになる」と語った。

国際文化学科教授 マクマレイ デビッド(国際俳句・英語教育)

後藤あんさん(中央)、早稲田大学本庄高等学院教諭の細喜朗先生(左)と筆者(右)