海外インターンシップレポート(10)――台湾での日々をふりかえって

2023年2月18日に台湾へ到着し、翌々日の21日から私のインターン活動は始まりました。インターン先は榕錦時光生活園区、日本統治時代に刑務所官舎として建てられた建築物を商業施設としてリノベーションした施設でした。台北の仙厳園と例えると分かりやすいかもしれません。国際大生の派遣は今回が初めてかつ単独での派遣となり、たった一人誰にも頼ることが出来ない状態で活動することに強い不安を抱えていました。

主な仕事内容は監獄時代に書かれた記録の翻訳作業でした。日本語で書かれた記録を英語に翻訳し、WORDファイルに入力し提出する日々でした。事前の説明ではこれに加えて「着物着付け体験の補助」もあるとの話でしたが、実際はほとんどの時間で翻訳作業に追われていました。量もさることながら現代では用いられない表現が極めて多く、持てる知識を総動員して試行錯誤を続けました。国語辞書を持参すればもう少し良い結果が出せたのではないかと反省しております。最終日には施設に併設されているカフェのメニュー(台湾語)を和訳して欲しいとの依頼もありました。

また、英語を話せるスタッフも在籍していましたが、基本的には中国語・台湾語で話さなければならず、当初はスタッフとコミュニケーションすら取ることが出来ませんでした。3年間中国語を学んでいたにも関わらず、です。伝えたいことを伝えられないもどかしさと悔しさで涙を呑む日々でした。中国語で自分の意思を伝えたい、もっと話せるようになりたい。しかし「朝おきたら急に話せるようになっていた」などと奇跡が起きるはずもないため、主に英語でコミュニケーションを取り、同時に中国語を話す作戦を地道に試しました。その結果、完璧とは程遠くとも簡単な意思疎通ならば可能なレベルに向上しました。責任者を初め、多くのスタッフに簡単な中国語で話しかけて頂いたことも大きかったでしょう。本当に3年間何をやっていたんだという思いではありますが。

他の事業所とは異なり対人業務はほとんどありませんでしたが、その分自分との闘いの色が強いインターンとなりました。自分の甘えにも気付かされました。仕事が終わらずに持ち帰ることになり、必死に仕上げて提出した後ふと窓の外を見ると空が白み始めていた日や、思うように作業が進まずに心が折れそうになったこと、投げ出しそうになったことも一度や二度ではありません。それでも踏ん張ることができたのは、中途半端なことをしてしまうと今後のインターンに影響が出るのではないかという責任感だけではなく、事業所のスタッフや私を台湾へ送り出してくれた学校など、協力して頂いた皆の期待に応えたい一心からでした。

約10日間の短い期間でしたが、戦力の一端として扱われ、責任のある仕事を任された経験は、私の価値観や考え方を大きく変えるきっかけになりました。そして何より「お疲れ様、ありがとう」と言ってもらえたことがこのインターン活動で最もやりがいを感じた瞬間でした。渡航前は「日本育ちの自分が海外で体験とはいえ働くことが出来るのだろうか」と不安でいっぱいでしたが、この経験を経て感じたことは「国籍や言語は大した問題ではなく、大事なことは相手と同じ方向を向くことができるか」です。たとえ価値観や言葉が異なっている相手でも、同じ目標を持つことが出来れば上手くやっていける。むしろそれが海外で働く醍醐味だと感じました。

最後になりましたが、今回のインターン実施のため奔走して下さった留学生支援室を始めとした鹿児島国際大学関係者の皆様、未知の学生を受け入れて下さった榕錦時光生活園区の皆様、翻訳のチェックをして下さっている台北城市科技大学の平田先生にこの場を借りて感謝申し上げます。皆様本当にお世話になりました。

国際文化学科3年 上川畑 茂絵