明治10年の戦争報道を検証する――学部主催講演会「庶民が見た西南戦争」

12月8日、北九州市立大学文学部准教授の生住昌大(いきずみ・まさひろ)先生(日本近代文学)を講師にお招きして、国際文化学部主催明治維新150周年記念講演会が開催され、本学学生、教職員、一般市民のみなさまを含めて約50人の聴衆が熱心に聴講しました。

テーマは「庶民が見た西南戦争――新聞報道の広がりと、明治10年の出版界」。明治10年に起こった西南戦争が、新聞、実録、錦絵といった当時のニュース・メディアでどのように報道されていたかを、豊富な実例で示しながら、新旧の媒体が並存していた明治初期の複雑なメディア状況の特殊性をわかりやすく解説していただきました。

錦絵に好んで描かれた「鹿児島女隊」(薩摩の士族の妻女が結成したとされる女性部隊)などは、現在の知見からは明白な「フェイク・ニュース」と思われますが、実は当時の新聞紙面に「女隊」についての風説の報道が繰り返し掲載されており、もともと真偽の保証のない風説の報道が絵師たちと読者たちの想像力をかき立て、今では荒唐無稽とも思える「女隊報道」につながったことが確認できます。これらのことを踏まえ、生住先生は、当時の報道について、現在の尺度で嘘か本当かの分別を行なうことは必ずしも当を得ていないと指摘されました。

質疑応答では、政府による報道の統制についてや、戊辰戦争など、西南戦争に先立つ戦乱の報道が西南戦争報道に及ぼした影響についてなど、様々な質問が出され、講師との活発なやりとりが聴かれました。聴講した学生たちからは「明治のニュース報道は現代のインターネットに近いものだと思いました」、「歴史系のゼミに所属しているので、今後の学習や研究に活かせるような歴史の見方について学べてよかった」、「明日(9日)の『西郷どん』がついに西南戦争の回になるので、今日のお話を踏まえて見たい」などの感想が寄せられました。