コロナ時代の地域企業の取り組みを探る――小林ゼミが南日本リビング新聞社を訪問調査

南日本リビング新聞社で。後列左から大迫社長、小林教授、西村取締役、前列左が井上さん。写真撮影のためにマスクを外しています(小林潤司研究室提供)

私が所属する小林潤司ゼミナールでは、今学期、「コロナ時代の出版とメディア」というテーマで文献を輪読するなどの研究を行っています。その一環として、地域のフリーペーパーがコロナ禍の影響をどのように受けているのかを調べるため、1月15日に南日本リビング新聞社(鹿児島市泉町)を小林教授とゼミのメンバーと一緒に訪れました。

来年40周年を迎える同社(1982年設立)は、週刊のフリーペーパー「リビングかごしま」、「リビングきりしま」を発行し、それぞれ鹿児島市、霧島市を中心とする県内エリアの各世帯に配達しています。インタビューに答えてくださった大迫純久社長によれば、購読料を受け取る一般紙とは違い、収益の中心は広告収入ですが、他にもイベントの企画開催、市の広報誌や選挙広報のポスティング業務の請け負い、さらには保育園の運営まで、数多くの事業を行っているそうです。鹿児島市が本学を含む県内大学で開講している講座「ライフデザインセミナー」も、同社が市から委託を受けて運営している事業です。

早稲田大学でフリーペーパー論の講座を担当されているという大迫社長からは、購読料を受け取らないからこそ、エリア内の全ての世帯の手元に届けられることの強みや、独自の掲載基準をクリアした価値ある情報を掲載することでネットメディアに対する優位性を保っていること、今後はチラシやDMに留まらない宅配サービスの可能性の追求が重要になってくることなど、日本型フリーペーパービジネスの強みと今後の展望について、分かりやすくお話していただきました。

また平時においては、フリマイベントや住宅関係のイベントなど各種のイベントを行うなど、媒体に対する信頼力を活かした圧倒的な集客力を強みにしてきましたが、コロナ禍の影響によってこの集客力が仇となり、「強みが即弱みに」なってしまったり、外部イベントの広告が取り下げられるなど、様々な影響を受けているとのことについて、営業局長の西村尚子取締役から詳しくお話を聞くことができました。

このような影響を受けながらも同社は行政と連携して、コロナ禍で苦境にある地域の事業者を支援しています。同社が事務局として運営と広報を一手に担っている、鹿児島市の「わくわくーぽん」事業です。このような活動は、時間をかけて積み上げてきた媒体に対する読者と事業者の信頼があるからこそだと思います。「一回のミスによって全ての信用を失うこともある」という大迫社長の言葉から、約40年をかけて積み上げてきた信頼の重みとともに、その信頼に応え続けることに対する責任の重さを感じました。

私にとって今回の訪問調査は、1時間という短い時間ではあったものの、フリーペーパーにおけるコロナ禍の影響を知るだけでなく、私自身のモノの見方・考えが変わるほど濃密で実りある時間を過ごすことができました。

国際文化学科3年 井上 吉祥